突然現れた弟の結婚相手は外国人の男性だった!?
両親の遺産であるアパートで大家をしている弥一は、男手一つで娘を育てているシングルファザー。ある日、弥一の家にカナダ人の男性、マイクがやって来る。連絡を受けていた弥一は、とまどいつつも家へと招き入れる。改めて、マイク本人について尋ねようと思ったところで、娘の夏菜が帰宅。マイクは夏菜に向かって、自分はあなたの叔父であると自己紹介をする。マイクは前月に他界した弥一の双子の弟、涼二と同性婚をした相手で、元々日本に興味があった事もあり、自分のパートナーであった涼二の故郷に訪れたのであった。ゲイカップルの婚姻が許されていない日本の文化しか知らない夏菜は興味津々。子どもの素直な感性でマイクの滞在を受け入れる夏菜であったが、弟の結婚相手である男にいったいどうやって接していいのか、ゲイ文化に対してまったく関心がなかったため、不安を隠せない弥一。かくして、父親と娘、そして義理の弟のカナダ人の奇妙な共同生活が始まるのであった。
自らをゲイ・エロティックアーティストと呼ぶ田亀源五郎が、一般漫画誌での初めての連載を刊行。異文化の交流から生まれる心温まるほのぼのホームドラマ。
『弟の夫』 みんなの感想
◆ゲイ文化を身近に感じられる漫画
失礼になってしまうのかとちょっと不安ですが、単純に漫画の主題として、この目の付けどころは凄い、と素直に面白いと思った作品です。ゲイという文化に、どこか背徳的なものを感じてしまうのは、やはりそういった文化が身近にない事が大きな要因ですが、この作品ではそういった日本人のとまどいがあるということもしっかり内包しつつも、単に同性が好きになるという心をもった普通の外国人であることを生き生きと楽しく描いていて、本当に心温まる漫画です。
◆登場人物の特殊な構成が生む新しい面白さ
日本ではまだ馴染みが薄いゲイ文化。海外ではもっと身近で一般的に受け入れられているところも多い。かつての日本の戦国時代では男色文化も珍しいことではなかったが、今の我々には、自ら触れる機会を作らなければ中々出会うことはないだろう。国際結婚な上に同性婚の義理の弟という異文化人と、娘を男手一つで育てるシングルファザーという非常に特殊な構成は面白い。また、とまどいつつも決して差別的に扱うのではなく、義理でも家族として受け入れようと奮闘する弥一の姿は、人間としても非常に尊敬できる。