『星の王子さま』は、フランスの作家で操縦士のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによって書かれ、1943年アメリカで出版されました。サン=テグジュペリは、郵便輸送のパイロットとして、欧州~南米間の飛行航路開拓に携わりました。26歳で作家デビューし、その自身の体験が作品にも色濃く映し出されています。
作品は200以上の国と地域の言葉で翻訳され、刊行後70年経った今でもなお世界中の多くの人から愛され続けています。児童文学として読まれることも多い作品ですが、子どもの心を忘れてしまった大人に向けて、サン=テグジュペリが書いたとも言われています。「生命とは、愛とは何か」といった人生の重要なテーマについて、示唆に富んだ言葉がちりばめられており、いつまでも色あせない名作だからこそ、大人になって改めて読み返したい一冊です。
今回は、王子さまや、登場人物たちの名言をお届けします。仕事や人間関係などに悩まされ、多忙な日々を過ごしているうちに、忘れてしまいがちになっていた気持ちをきっと「王子さま」が気づかせてくれるでしょう。
画像引用:http://www.manrepeller.com/2013/05/the-little-prince.html
【あらすじ】
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。
※新潮文庫(サン=テグジュペリ作、河野万里子訳)より。以下も本文抜粋引用。
P5
親友のレオン・ヴェルトに捧げる献辞での言葉。誰しもが子どもであったにも関わらず、いつしかそのことを忘れてしまいます。ある意味私たち生きるために、都合よく大人になってしまったのかもしれません。
P39
花のトゲが何のためにあるのかという「僕」との会話の中で、王子さまが言います。無意識に物事に優劣をつけていることに気づかされる言葉です。
P96
バラの咲く庭園で、5千本のバラを見たとき、王子さまが心の中でつぶやいた言葉です。広い世界を知ることは、時として残酷な現実を突きつけます。
P100
出会った王子さまとキツネが友情を育むシーン。このキツネが言うこの言葉は、さまざまな翻訳のされ方をされていることでも有名です。ぜひ読み比べて、お気に入りの表現を見つけてみてください。
P108
『絆を結ぶ』ことについて「金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくはきみを思い出すようになる」とキツネは答えます。別れ際に、仲良くなったキツネが教えてくれる、とっておきの「秘密」です。
P110
「みんな自分がいる場所で満足できないの?」と訊ねる王子さまに線路のポイントを切りかえる鉄道員が言った言葉。人間の貪欲な性質をよく表しています。
P111
「子どもたちは、ぼろきれのお人形に時間を費やす。だからそのお人形はとっても大事なものになる。それで、とりあげられると泣くんだね……」、「幸せ者だな、子どもたちは」と、鉄道員と会話をします。
P132
お別れのときが近づいていることが分かった王子さまが、「僕」に贈った言葉。どんなに悲しい気持ちになっても、この言葉を思い出して星を見上げれば、心が温まります。
P135
「死」と向き合おうとする王子さまの言葉です。死ぬこととは何なのか、考えさせられます。「でもそんなの、古い抜けがらみたいなもんだよ。古い抜けがらなんて、なんにも悲しくないでしょ……」と続けて言います。
ゆっくりと『星の王子さま』を読みなおしながら、自分と向き合う時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
最後に、電子書籍で購入できる『星の王子さま』をご紹介します。現在、Kindleアプリを利用すると、無料のサンプル版も読むことができます。
ぜひあなたも、自分だけのお気に入りの名言を探してみてください。
星の王子さま (岩波少年文庫)
内藤濯訳 2000年 岩波書店
日本で最も初めに翻訳され、長年読まれ続けてきた「定番」の一冊です。作品の王道として一度は読んでおきたいですね。
星の王子さま
浅岡夢二訳 2013年 ゴマブックス
浅岡夢二の新訳。大人が読む『星の王子さま』として、スピリチュアルな新しい解釈と、新鮮なニュアンスで読むことができます。
星の王子さま(角川文庫)
管啓次郎訳 2012年 KADOKAWA / 角川書店
管啓次郎の新訳。一般的な「王子さま」のイメージを覆す、斬新な翻訳。出会ったことのない新しい『星の王子さま』を楽しみたい方は、ぜひ。
<番外編>The Little Prince (Illustrated)
2016年
名作を英語で読んでみよう! 今Kindleで人気を呼んでいる一冊。子どもも読めるよう、わかりやすい英語で書かれているので、チャレンジしてみるのもいいかもしれません。イラスト付で値段もリーズナブル。