衝撃のラストは必見
〔映〕アムリタは、一見したところ、ミステリー調の青春小説として捉えることができる小説でもあります。青春小説、或いはジュブナイル小説と言ってもいいのですが、最高の映画を制作することを求めて、大学の映画サークルの仲間が映画作りに没頭していく姿や、その映像芸術を極限まで求めていけるヒロインの姿は、ある意味とても青臭くあり、若々しくもあります。
そして、この物語の大道具として使用される映画作りと言うことに対するヒロインの映像制作能力は、ジュブナイル小説にありがちな天才的なものであり、そこには若さゆえの葛藤と言うものもみられません。
主人公は、ヒロインのその天才性に疑問を持って、そのわだかまりが捨てられずに、謎解きに奔走することになり、そういった意味ではミステリー調です。しかし、この小説の本当の姿は、その謎が解明された時の、背筋の冷たくなるような空恐ろしさにあります。その意味で、〔映〕アムリタと言う小説は、本質的にはホラー小説であり、そのつもりで読んでいくと大変面白く読むことができます。
ただ、この小説の作者の文章力はかなりのものがあり、軽妙な言葉遊びも随所に見受けられ、それを楽みながら読み進めることができる作品です。