真実を歪めたのは誰だ?2年の歳月を経て、怒涛の出来事の裏舞台を語った衝撃の手記
著者の小保方晴子氏は研究者として賞をとったわけでもないのに有名人だ。彼女は自身が筆頭著者であるSTAP細胞の論文が世界の権威である「ネイチャー」誌に掲載され、一躍「時の人」となった。しかしその後、自身の博士論文や研究自体の不正が指摘され、一気に頂点から底へ転落したことはメディアで大きく取り上げられた。彼女は現在、博士号は取り消され研究拠点であった理化学研究所を依願退職し、その後メディアから姿を消している。マスコミも世論も批判はしていたものの、その「真相」はどこにあったのだろうか?
本書は2年の歳月を経て、怒涛の出来事の裏舞台を語った勇気ある内部告発文でもある。文章は小保方氏の研究に捧げた人生が時系列で語られる。研究の道へと駆り立てた友人とのエピソード、研究に魅せられてのめり込んでいく経緯、恩師への思いと本意からかけ離れていく距離感・・・。裁判が検察と弁護側の双方の視点で語られるように、出来事は多方面から観察してようやく「真実」にたどり着くこともある。あなたもこの本を読んで、公平な視点でこの出来事をジャッジしてみてはいかがだろうか。
電子書籍ランキング.com 編集部T
『あの日』 みんなの感想
◆出る杭は打たれるのか
理系の大学に行って卒業論文のために研究室に配属された人間ならば、彼女がいかに優秀な人物であるかがわかるだろう。学生は大体が助教授や院生のお手伝い程度に留まり、自ら未知の領域に踏み込んでいくようなことはほぼない。最近は某アイドルの記者会見など、華やかな舞台の裏側が明らかになる出来事が相次いでいる。やはりこの縦社会においては人間の欲望や嫉妬によって才能ある人間は淘汰されていくのか、と世の中の縮図をみているようでぞっとした。小保方氏の損失はあまりに大きく、残念でならない。
◆これから研究職を志す若者へ
生物の授業で出てきたような用語がたくさん出てきます。難しい内容で読むのに時間がかかってしまいましたが、細胞培養の手順など素人にもわかりやすいように丁寧に描かれていました。印象的だったのは、小保方さんの感受性の豊かさでした。「実験がしたい」というシンプルかつ純粋な願い、ミラクルが起こるように展開していく人生、恩師や同僚とのワクワクする日々。自分も研究者になって発見をした気分になりました。研究職に限らず自己実現を目指す多くの若者に読んでもらい、夢を叶える方法として参考にしてもらいたいです。