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いぬやしき

奥浩哉のいぬやしき(電子コミック)レビュー

いぬやしき 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
奥浩哉 204ページ ★★★★☆

おじいちゃん萌えの奥浩哉最新漫画

『いぬやしき』は『変』や『GANTZ』などで有名な奥浩哉が2014年から『イブニング』にて連載している漫画作品です。これまでの奥浩哉の作品というと「巨乳美女」や「イケメン」が活躍する作品が多かったのですが、本作『いぬやしき』の主人公は、どう見ても見た目は「おじいちゃん」といった風貌の小柄で気弱な58歳のサラリーマンがつとめます。2014年11月現在2巻まで発売されていますが、各ストアでの本作の売れ行きは軒並み10位以内にランクインするなど好調なようです。

一般的に少年や青年が主人公といった漫画作品は多いですが、ほぼ老人と思われる存在が主人公の作品はなかなか珍しく野心的な作品であると思います。またこの作品の主人公「犬屋敷壱郎」ですが、いわゆる無力な小市民といった描かれ方をしていますが、善良で一定以上の正義感を持っています。ただ正義感があるといってもトラブルに巻き込まれると、「ぷるぷる」と震えているだけで何もできません。情けなくも描かれてもいるのですが、この描写は秀逸で語弊はあるかもしれませんが「老人に萌え」ます。

主人公の犬屋敷壱郎は娘や息子には侮られ嫁にもぞんざいに扱われており、無借金で一戸建てを建てる十分立派な一家の大黒柱ではありますが、娘にはこんな小さな家とののしられます。なんとなく我が家に居場所のない気弱な父親の壱郎、この悲しい大黒柱は、健康診断にて「もってあと3か月の末期癌」だと宣告されます。なかなか家族に切り出せず、悩みながら近所を徘徊しているある夜「一人の少年」とともにある事件に巻き込まれます。いわゆるちょっと薄暗い社会派の作品であると思って本作を読んでいましたが、なんと宇宙船の墜落に巻き込まれるという「とんでも展開」に発展します。

宇宙人は地球人を事故に巻き込んだ事実が発覚するとまずいらしく、間に合わせの素材で二人を何とか復元します。その結果戦闘型のサイボーグと変貌を遂げます。パワーが人間のそれとは異なり、電波ジャックや電子機器へのハッキング、遠隔攻撃、さらには飛行能力まで壱郎は得ることになるのです。元来正義感が強い壱郎は、己が人間として失われたことを嘆くとともにこの力を人の役に役立てようと奔走します。

一方、一緒に事故に巻き込まれた美形の少年「獅子神 皓」は、その力を使い人を殺してまわり、ハッキング能力で銀行から金を盗むなどといった、その得た能力を背景に悪逆の限りをつくします。そんな非道の少年の存在に気が付いた壱郎は彼の元へ・・・。といったお話です。

描写力に優れ哀愁を伴いながら話は展開されてきましたが、気が付けば奥浩哉版サイボーグ爺ちゃんGになっています(笑)。しかし先述した通り、なかなか奥深い漫画作品で、更に「おじいちゃん萌え」となることは通常なく、独自の味を出している怪作であることは間違いありません。



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