現在の五千円札の肖像、「樋口一葉」。顔こそ知っているものの、その文章についてはよく知らないという人も多いのではないでしょうか。自分自身も、『美しい表紙で読みたい たけくらべ』で初めて樋口一葉の作品に触れました。「たけくらべ」というタイトルからは、のんびりとした子供時代のような雰囲気を感じますが、実際の内容というのは「のほほん」としたものではありません。
この小説を読むためには、現代の感覚をそのまま持ち込んではいけないでしょう。樋口一葉は明治初期の人で、この作品自体も明治の時代背景というものをなぞっています。実際、この小説は樋口一葉の実体験を元にしていると言われると、今の人からすると衝撃を受けることになるでしょう。この小説の主人公は美登里という少女と、藤本真如という少年の二人を中心にして進んでいきます。子供から大人へと変わっていく、そんな時期を描いた作品です。
この時代における「子供」から「大人」へ、というのは、現代とかなり感覚が違うでしょう。今では成人式を迎えれば大人かも知れませんが、当時の『大人』というのは職に付くことです。少女美登里は遊郭で遊女に、真如は僧侶になる、そんな背景は今の時代では理解するのが難しいかも知れません。
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