大正ロマンあふれる少女漫画の金字塔
大正7年、花の都・東京。古く江戸時代は徳川家の旗本だった良家・花村家の一人娘、花村紅緒は女学校に通うお嬢様。妻に先立たれ、娘の紅緒を男手一つで育てようとした父が、元気で強い子にしようと教育したため、可憐な見た目とは裏腹に、度胸があって喧嘩も強く、家事が滅法苦手でガサツな性格に育ってしまう…。隣近所に住んでいる幼馴染で歌舞伎役者の息子、藤枝乱丸を相手に剣術の稽古をつけるほどのおてんばぶりに、教育方針を間違えたか…と父の悩みの種になっていた。
ある日紅緒は、いつものように学校に向かう途中、自転車で転倒してしまう。そこに通りがかった若い軍人、伊集院忍に「女だてらに自転車に乗って意気がっているからだ」とたしなめられるが、忍の頬をひっぱたき「婦人の失態を笑うなど礼儀がなっていない」と、毅然とした態度を取るのであった。
この運命的な出会いが、2人の未来に大きく関わっていくとは、まだ知る由もなかったのである…。
17歳の少女が時代の波に翻弄されながらも、恋を通して大人へと成長していく物語を描く。連載終了後、映画やドラマ、アニメと数多くの分野で映像化され、未だに根強いファンを持つ大正ロマンあふれる少女漫画の金字塔だ。
みんなの感想
◆大正という時代を感じられる漫画
「はいから」とは、西洋に影響を受けた議員たちの丈の高い襟「ハイカラー」の先進的なファッションが転じて、新しい考え方や思想を持つ人のことを「はいからさん」と呼んでいた。作中にも描かれているが、女性解放運動が活発だった時代。女性は男性に従うもの、という男性中心の旧態然とした考え方に反発し、女性の自立や自由な生き方を真剣に考えている紅緒や、親友の環の生き様は力強い。大正という当時の歴史や時代背景もしっかり描かれていて、資料としても面白い漫画だ。
◆年齢を感じさせない大人っぽさ
紅緒や環をはじめとして、若い登場人物が皆、イキイキとして好感がもてました。ところどころにギャグ描写で子供っぽい場面もありますが、紅緒が17歳という年齢で縁談が持ち上がるというあたりに、若くして将来の展望や、女性としての生き方について考えなければいけない時代だったのかなと思いました。
ちなみに、女学生たちが着ている袴姿は、今でも「はいからさんの服装」で通じることから、やはりこの漫画の影響力は大きいように感じます。