「好き」ってどんな感情? 少女同士の恋の行方
主人公の小糸侑は高校に入学したばかり。通常なら新生活に浮かれていそうなものだが、主人公の表情は冴えない。それは「恋愛という特別な感情」がわからないという悩みを抱えているから。
そんな主人公はある日偶然にも、生徒会の先輩である七海燈子が男子生徒に告白され、キッパリと断る現場を盗み聞きしてしまう。「今まで好きって言われてどきどきしたことないもの」という燈子の言葉に救われる侑。共通の秘密を持つ二人は、だんだんと親密になっていく。
が、燈子の「君のこと好きになりそう」という告白、踏切での突然のキス…。侑は燈子にとって「特別」になってゆくが、侑に「特別」は理解できない。周囲も巻き込んで交錯する好意と嫉妬、相手によって揺り動かされていく「特別」。
百合漫画、とは女性同士の同性愛漫画の隠語である。通常は男性向けの性的表現が過剰なものが多い。しかしこの漫画は、初めて人に恋をすることの純粋さを描いており、相手がたまたま女性だったとしか思えないようなさわやかさである。
綺麗で可愛い絵と、丁寧で繊細な描写、漫画ならではのコマ割で感情を表現したりと、漫画としての完成度も非常に高い。
一味違った恋愛漫画を読みたい女性のみならず、万人にオススメしたい一冊である。
みんなの感想
◆人を好きになることがわからない人もいる衝撃
片思いばっかりしてきた自分にとっては、告白を断る理由が「今は誰とも付き合う気がない」とかだと、ずるいな思ってなんかムカついていました。はっきりタイプじゃないとか言って、告白した側に気を持たせるようなこと言わなきゃいいのにと。でもこれを読んだら、本当に人を好きになることがわからない人もいるのか、と衝撃を受けました。そして好きになれないこと、期待に応えられないに同じように悩んでいる。相手のことを見ているようで見ていなかったのは自分だったのかもしれない、と反省しました。
◆女性でも抵抗感なく読める作品
同性愛はBLとか手軽に本屋さんでも買えるので特別視していませんでしたが、女性同士はなんとなく抵抗がありました。でも読んでみると、登場人物はみんな誠実な思いやりのあるいわゆる普通の人で抵抗感なく読めました。わたしは男性にしか恋愛感情を持ったことがないので、普通とは違うというだけで偏見を持つ自分を恥じました。恋愛において、むしろ性別だけで選り好みしているほうが普通ではないのかな? と考えさせられました。