魅力的なヒロインが躍る「現代版 白い巨頭!?]
『アスクレピオスの愛人』は、林真理子著作の2013年島清恋愛文学賞を受賞作品です。
アスクレピオスという耳慣れない言葉は、ギリシャ神話で医術を司る神を指します。そして、蛇の巻き付いたアスクレピオス杖はWHO(世界保健機関)のシンボルです。
主人公は、そのWHOでメディカルオフィサーとして働き、世界中を飛びまわってウィルスと戦っている女性、佐伯志帆子です。林真理子さんが描く女性と聞けば、見どころたっぷりなのが期待できるこの作品の主人公は、崇高な仕事をする昼の顔と、奔放さを見せる夜の顔の両面を見せます。昼は感染症の最前線で働き、夜は恋人と濃厚な時間を過ごす、このように、佐伯志帆子は実に林真理子的な女性であり、この作品も実に林真理子的な内容です。
ただ、新潮社から、現代の「白い巨塔」を書いてみないかと打診されたというのがきっかけで書かれた作品ですので、医療ものとして非常に良く取材された内容です。
愛と恋愛とそれにまつわるドロドロの世界と、医療現場の実情や過酷さが混ざり合い、非常に読み応えのある作品となっています。現代の「白い巨塔」に達しているかというと賛否は分かれるところですが、社会小説でもあり、恋愛小説でもあるといえるこの作品、一読する価値はあるでしょう。