石ノ森章太郎の超能力ヒーロー
『イナズマン』は、1973年から1974年にかけて『週刊少年サンデー』にて連載された石ノ森章太郎作の漫画作品です。また特撮テレビ番組としても1973年から1974年にかけてテレビ朝日系列にて放送されました。
主人公は風田サブロウという中学生ですが、超能力に目覚め、仲間達と共に新人類帝国という人類打倒を目指す秘密結社と戦っていきます。一応変身ヒーローアクションものに分類される作品ですが、主人公は肉弾戦ではなく超能力で戦います。サブロウには変身能力があり、イナズマンに変身することで超能力が解放され戦闘力がアップします。この変身した後の姿というのが蝶をモチーフにしており、つるつるの坊主頭でおでこに触覚と吸収管の生えたかなり特異なデザインになっています。
恐らく同名の特撮番組との原作として書かれたためか、当初は超能力を持った仲間達と一緒に悪の組織と戦うという娯楽色の強い(ややお色気もありの)学園アクションものだったのですが、最終パートでは雰囲気が一変、どこか人類への絶望を感じさせる陰鬱な雰囲気の作品となります。
ラストはややあっけなく終わってしまう印象がありますが、高度成長期に生じ始めた様々な社会の矛盾を前に、少年マンガであっても牧歌的なハッピーエンドを描く事に対し欺瞞を感じていた石ノ森章太郎らしいテイストが十分に感じられるラストとなっています。