2012年ファンタジア大賞銀賞のラブコメディ
ウチの彼女が中二で困ってます。は2012年ファンタジア大賞銀賞した日の原裕光(著)/有子遥一(イラスト)の作品です。変化球的をラブコメといっても差し支えない作品です。今ではかなり浸透している「中二病」という言葉ですが、そこからタイトルと設定を考えたのは、作者としてはかなり考えぬいたタイトルと作中の設定のように感じますが、中身がいかんせんタイトルに引きずられてラブコメと学園ファンタジーの間で揺れ動いているように思えます。
とはいえ本作は2012年ファンタジア大賞銀賞というライトノベル界の力作の1つではありますので、ぜひ手に取ってもらいたい1冊です。良い点をあげると、本作は王道の学園ファンタジー&ラブコメですが、この作品の中でオリジナルの定義ともいえる〈中二病〉の特性をもつキャラクターたちが、物語のおもしろさの一役を担っています。島を吹き飛ばす光線をだすことができる、存在感を消せる、身体強化など、主要キャラクターたちの〈中二病〉能力は、日常生活の中で耳にする〈中二病〉の枠を越え、想像のつかないオリジナルのおもしろさがあります。活発なヒロイン・陽成美を初め、キャラクターたちは可愛く魅力的で、表紙を飾る有子遥一のイラストも読者を引き寄せるでしょう。
敢えて厳しい言い方をすると、ただの言葉遊びのようなタイトルと小説の中身が、アメコミとラブコメと学園ファンタジーを足しただけの印象も与え、贅沢な話かもしれませんが読み手を引き込ませる内容に少しだけ乏しい感じもします。この作品の基本路線はラブコメが少し強い感じがしますが、そこを基本線にして作者のこだわりの部分は味付け程度にしておけば、もっといい作品になったのだろうと思われます。タイトルだけなら手に取る方も多いかもしれませんが、もっとラブコメ部分を前面に押し出した作品にしても良かったのではないかという気がする作品です。タイトルはどうしても読み手に見てもらう為の戦略として必要な部分ですが、作品の中身がまだまだ固まっていない印象を受けました。作者が作品の中で書こうとしている事が分からなくもないですが、突飛な設定と日常をつなげる仕掛けがあっても良かったかもしれません。