笑いたければこの漫画を読め
カメレオンは、『加瀬あつし』の代表作で1990年から2000年まで10年にわたり『週刊少年マガジン』にて連載された、異色ギャグ不良漫画です。本作は第23回講談社漫画賞少年部門受賞という、本作の内容知っている者からすればホントかよ?と思わざる得ない賞も受賞している人気作品です。
本作の全巻を通した感想を述べれば、「非常に下品でくだらないが底抜けに面白いマンガ」であると断言できる作品です。これほど、しっかり笑わせてくれる漫画作品は稀有なのではないでしょうか。
本作の主人公・矢沢栄作は身長130cm~140cmの高校生で、中学生時代はいじめを受けていたものの高校生ではヤンキーデビューしバラ色の生活を夢見るダメ人間(IQだけは150)。ケンカはからっきし弱いが、ハッタリ(嘘)とツキ(強運)でピンチを乗り切り、全国の不良の頂点へ上り詰めるといった内容です。このハッタリは作品のかかせないギミックであり見どころの1つなのですが、作者のセンスが光るポイントとしては擬音や会話などの言葉遊びが非常に巧みという点です。この言葉遊びや言葉選びについて加瀬あつしという漫画家はマンガ界で屈指の能力なのではと感心させられるとともに、実際本当にくだらないものであもあります。ただしそこに読み手の笑顔も必ず存在するのではないでしょうか。
基本的に主人公の矢沢栄作は屑で、己の保身しか考えていない男です。しかし漢の中の漢を地で行くよう振る舞い、それを周りに信じ込ませていきます。ハッタリで暴走族の跡目争いを治めると、作品の最後まで脇を固める相沢と椎名を味方につけ学校内でトップの地位に上り詰めます。その後も近隣の不良学校とのトラブルが起こりますが、自分だけ助かろうとする卑劣さ全開で乗り越えようとします。そして得意のハッタリとツキに恵まれ県内の不良のトップに上り詰めます。松戸倶楽部編では本作屈指の人気キャラで主人公の対比的な存在である松岡が登場し、その後も幾度か抗争を起こします。
その後も暴力団の跡目争いに巻き込まれて高校生の主人公矢沢が見事治めたり、日本最大の暴走族を10人程度で壊滅させるなどし全国の不良のトップに上り詰めます。今回はどんなハッタリで乗り切るのか、いつ正体がばれるのかなど、ドキドキしながら毎回楽しむことができます。主人公の矢沢栄作は、何よりわが身が可愛く、そのためなら仲間も平気で裏切ろうとする漢の中の漢とは真逆の道を進む卑劣漢ですが、ヒロインの光ちゃんに対しては損得抜きで唯一己の体を張って守ろうとします。ここだけは男らしいです。
全国の頂点に立った矢沢は、調子に乗り矢沢祭りといった己を称える祭を開催します。これまた出し物がひどく(作者の言葉遊びも相変わらず)「精か子か!性器の対決(生か死か!世紀の対決)」などと謳い、仲間の椎名君の股間と牛を縄でつなげて綱引きをさせようとしたりなどなど相変わらず屑っぷり全開なのですが、ここで一つの転機が訪れます。
ひょんなハッタリから東大を目指すことに。矢沢も引くに引けなく東大受験に・・・といった流れで不良漫画から受験生としての話に流れは大きく変わります。受験編と不良編ではやはり多くの人の評価は不良編の方が高いです。私もそのように思いますし、おそらく単行本の売れ行きも不良編までが極めて高かったと思います。紙の単行本であると受験編の発行部数は不良編と比べ少なかったのか中古作品にも関わらず定価以上の値段がつけられていることもしばしば。
そんな状況からカメレオンの受験編を見ようとしても、気軽に手に入れることは難しかったのですが電子書籍版が出版され容易に手に入るようになりました。累計発行部数3,000万部を超える大作ギャグ漫画『カメレオン』を未読の方に、そして疲れて笑いを忘れている方にも是非気分転換がてら見ていただきたい作品です。