主人公は車!?車目線で語られる新感覚ミステリー!
2011年11月から2012年12月の約1年の間、朝日新聞の夕刊で連載していた伊坂幸太郎の人気小説が文庫になって登場。
ちょっと頼りない二十歳の兄・望月良夫と、十歳でありながらいつも大人びた発想と機転の良さを発揮する弟の亨。兄弟はあるとき突然、有名女優が死亡した交通事故をめぐる騒動に巻き込まれてしまいます。その後、二人の一家には次々と新たなトラブルが降りかかり―
この物語の主役は望月家の愛車である緑色のデミオ。車目線で語られるストーリー展開で味わう、心温まる新感覚ミステリー!
みんなの感想
◆ファンタジーと謎解きが見事に絡み合う
車を擬人化した表現がとてもユーモラスで、アニメーションのような世界観がある。斬新な設定ながら、違和感を感じさせないのはさすがだなと思った。とても読みやすく話にスッと入っていけるが、少々稚拙な感じがするのは否めない。しかし、グッと身が引き締まる展開の謎解きと、和やかな雰囲気漂う“ミドデミ”たちの語らいとのメリハリが読者を飽きさせない仕掛けとして効果を発揮していると感じる。
ガツンとくる衝撃があるミステリーを読みたい人はちょっと物足りなさを感じるかもしれないが、ミステリー小説としてしっかりと成り立つだけの伏線の数々と、それが解き明かされていく気持ち良さ、そして納得のラストで大満足できる作品。
◆車に感情移入するなんて…
車にはあまり詳しくないので登場人物(登場車両?)の個性の想像がなかなかスムーズにいかず、最初はしっくりきませんでしたが、難解な描写はほとんどないので徐々に慣れていきました。思わず、緑色のデミオがどんな車なのかネットで調べて確認してしまいましたよ。実際にあったダイアナ元皇太子妃の事故とリンクさせながら荒木翠の事件を追いかけることで、リアリティがグッと増す感じ。読み始めこそ、この設定は奇をてらいすぎなのでは…とも思いましたが、すぐにそのモヤモヤは溶解。亨に母性本能を刺激され、持ち主思いのデミオに感情移入してエピローグでは涙をこぼし… 大いに感動させていただきました!