始皇帝の時代を描く傑作
キングダムは原泰久の歴史漫画で、2006年から週刊ヤングジャンプで連載されいてる人気作品です。またNHKにてTVアニメ化もされています。キングダムは主人公の信と秦王政(後の始皇帝)を中心に進む春秋戦国時代時代の物語。
秦の始皇帝といえば、万里の長城や兵馬俑などを作るために民に膨大な負担を強いたことや、焚書坑儒に代表されるような圧政と不老不死を求め水銀を飲み続けたといった伝説だけが注目され、一種の”悪”としてとらえられることが多いのではないでしょうか。しかし、そんな始皇帝と、彼の盟友『信(のちに李信』の若き日を描いた「キングダム」からは、暗いイメージがいっさい感じられず、夢を追いかけ、ただひたすら前に進む若者たちの青春が浮かび上がります。
また2人の青春を彩るのが周囲の人物たち。素性を隠しながら戦へと赴く女性たちや、中華全土に名を馳せる伝説の武人の人となりや発言、行動がしっかりと作りこまれており、引き込まれずにはいられません。特に、圧倒的な政治力を持つライバルのいやらしさには、読んでいて思わずニヤリとさせられます。有能な部下たちとともに颯爽と現れ、一斉に両手の指を胸の前で組み合わせて敬礼する姿は美しいの一言。かと思えば、国の存亡をかけた戦の最中に策謀を張り巡らせているときの表情のこざかしさといったら言葉にはできないほど。そんなギャップを描く分ける作者の画力に舌を巻きます。
絵柄がちょっと苦手という人もいるみたいですが、読めばわかります。あの絵柄が迫力を後押しし作品に良質な個性を与えているのだと。絵柄だけで読まない方は間違いなく損をしているといってもいいほど、本作キングダムの出来栄えは素晴らしいです。フィクション要素は多分にありますが、今まで知らなかった中国史の一面を最高にエキサイティングに見せてくれる作品です。