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ジャングル大帝

手塚治虫のジャングル大帝(電子コミック)レビュー

ジャングル大帝 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
手塚治虫 173ページ ★★★★★

アニメ版とは違う原作のジャングル大帝

ジャングル大帝は手塚治虫の代表作で、月刊漫画誌「漫画少年」に1950年から1954年にかけて連載された作品で、プロ野球チーム西武ライオンズのロゴやマスコットでも長らく愛されているのでご存知の方も多いはず。しかし多くのアニメがそうであるように、このマンガもアニメ化される際には多くの制約を受けざるを得ませんでした。不特定多数の人の目に触れ、スポンサーの意向に左右されるアニメでは、原作からは多くの点で変更を余儀なくされています。

一般的には、「ジャングル大帝」は原作よりもアニメを見た人の方が多いと思われます。原作を読むと、アニメではお馴染みのマンドリル「マンディ」が原作にはいないことに驚くかもしれません。しかし、見どころはもっと根源的な違いにあります。アニメでは勧善懲悪的な二元論が展開されていますが原作では必ずしもそうではありません。アニメでは一貫して「自然」を守ろうとする者と、脅かそうとする存在の対立が描かれており、レオの子どもたちがあらたなジャングルを守る存在となりレオと妻のライアがそれを見守るというラストとなっています。

しかし、原作ではライアは病死し、レオは冬山でヒゲオヤジを救うために自らの命を捨て、ヒゲオヤジは泣きながらレオの肉を食べて生き延びます。この悲惨とも言える結末は、原作とアニメの端的な違いを物語ります。原作においても自然を守る大切さは語られているものの、自然の摂理とは他者の命を奪って自分が生きること。この理からは、例えジャングルの王者の主人公であっても逃れられないという相対的な視点を示しています。


アニメ版を見ているだけでは知りえなかった本当のジャングル大帝を知りたい人には一見の価値ありです。



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