新世代のスパイ小説!ジョーカーシリーズの第一作
吉川英治文学新人賞&日本推理作家協会賞を受賞した、柳広司のジョーカー・ゲーム。シリーズ累計120万部を突破した大ヒット作の第一作目であり、実写映画化やアニメ化もされた極限のスパイ・サスペンスです。
D機関――それは、昭和12年に設立されたスパイ養成学校。尋常でない試験を勝ち抜いたまさに精鋭たちが、諜報員となるべく様々な訓練を受ける施設である。
陸軍内の反対を押し切ってD機関を設立したのは、自身もスパイとして長年活躍してきた“魔王”こと結城中佐。ある敵国に潜伏していたが仲間の裏切りによって捕らわれた彼は、取り調べや拷問に耐え抜き、自ら脱出したという逸話の持ち主。しかもその際に敵国の機密情報を持ち帰ったという、伝説的人物なのだ。右手に白い革手袋、不自由な左足を支えるための杖…拷問によって負った傷は、結城が死線をくぐり抜けてきた証であった。
設立まもなく、D機関に派遣されたのは佐久間陸軍中尉。表向きは参謀本部との連絡係として、その実彼らの弱みを握り、スパイ育成などという不届きな組織を撲滅するために送り込まれた監視役であった。
佐久間はそこで、訓練に励む学生たちの異常さを目の当たりにすることとなる。彼らは偽りの名と経歴を騙って過ごしており、同期であっても互いの素性は知らない。友人も仲間も恋人も、家族でさえ…任務のためには切り捨てる。天皇をも畏れないその傲慢さに、軍人としての生き方を叩きこまれた佐久間はことあるごとに反発をする。
そんなある日、「アメリカ人技師ジョン・ゴードン宅から暗号表(コードブック)を見つけよ」との指令が下される。親日家として知られる彼が、実はアメリカのスパイであるとの証言があったのだ。
佐久間たちD機関の学生たちは、憲兵を装ってかの宅を捜索するのだが証拠となるものは見つかる気配すらなく――このままでは佐久間が切腹しなくてはならない、絶体絶命のピンチ。彼らはどのようにこの局面を乗り越えるのか――…!?
「死ぬな、殺すな――捕まるな」スパイとしての3箇条をもとに、日本・中国・イギリスを舞台として繰り広げられる頭脳戦。敵も味方も欺いて、自分のみを信じて生き抜け!! 表題作「ジョーカー・ゲーム」他、4編収録した珠玉のスパイ小説。
みんなの感想
◆まさにエンターテイメント!
ミステリ好きには堪らない今作は、スパイという要素も加わってさらに魅力的なものでした。どこか華やかな憧れさえ抱くスパイですが、このジョーカー・ゲームでは、ひたすら目立たない影のような存在として描かれています。
長期潜入の際には現地でカモフラージュのために結婚して子供をもうけることもあるという彼らは、任務に差し支えると判断すれば家族をあっさり切り捨てます。あまりにも冷酷な判断をできるところを見ると、自分のような凡人とはかけ離れた、どこか精神の破綻した人格をも窺わせるのです。
結城中佐のさりげないヒントから、毎回結末を予想するのが楽しみでした。シリーズ全巻、読破したいと思います!
◆マンガにハマって、原作も読んでみました
ジョーカー・ゲームはたまたま読んだマンガの世界観にハマって、原作小説があると知って、今回読んでみました。
私は普段、こういったスパイものは全然ダメなんですが、この作品は読みやすくてサクサク進みました。短編だということもよかったのかも。
スパイ学校の生徒たちを俯瞰で眺めているような、結城中佐があまりにかっこよすぎます。任務を言い渡した時から、すでに全容が掴めているなんて…おそろしすぎる。
短編ごとに主人公が変わるので、色んな角度から楽しめる作品だと思います。