龍皇杯から生まれた良作
「スクラップド・プリンセス」は月刊ドラゴンマガジンで行われた「龍皇杯」という企画から誕生した榊一郎氏の代表作と呼び声高い、剣と魔法のファンタジー物語。TVアニメ化もされています。
面倒臭がり屋の「シャノン」と天然ののんびり屋の「ラクウェル」そして可愛物好きの妹「パシフィカ」。この3人の兄姉妹が主人公です。3人はそれなりに平和で呑気に毎日を過ごしていたが、ある時を境にそれは一変します。突然の父の死に遭遇し、妹のパシフィカが刺客に襲われる事件が起こります。パシフィカに一体どんな秘密が隠されているというのか?シャノンとラクウェルの、大切な妹を守るための逃亡の旅が始まります。
やむなき事情で逃げ延びるお姫様と、それを守る戦士と魔法使い。そして、お姫様を狙う追手たち。 物語の設定の骨子はよくある型通りの貴種漂流譚ものなのに、読み手をぐいぐい物語に引き込んでいきます。 これだけ使い古された設定でも手がける語りべの手腕次第でここまで面白くなるのかと感心させられる作品です。
ファンタジー小説は世界観の表現がしっかりしていないとなかなか感情移入できないものですが、この作品は難無くすんなりと物語の中へ導いてくれます。愛・冒険・謎、そしてちょっぴりユーモア、ファンタジー好きにはたまらない王道作品といえます。