ライトノベル史にその名を刻んだ伝説の作品
スレイヤーズは神坂一著、イラストあらいずみるいのライトノベル小説で、中世ヨーロッパをベースとし、エルフやドラゴンが躍動する剣と魔法のファンタジー小説です。
スレイヤーズはとにかく壮大な世界観で描かれており、今なお根強いファンが多い作品として有名ですが、同作はライトノベル小説から始まり漫画化、アニメ化、映画化さらにはゲーム化と幅広くメディア展開が行われた作品としても有名で、メディアミックスの成功例としてもその名を轟かせています。
ライトノベル史というものを考えると「スレイヤーズ」という作品は、その歴史から絶対に外すことができない作品の1つです。前述したとおりスレイヤーズシリーズは商業面での成功にくわえて、2,000万部の発行という数字が示す通り幅広い層へ作品を浸透させることに成功しました。これまでライトノベル小説は一部の趣味の人たちの作品という扱われ方だったものが、一般層まで浸透させることができたことは新たなる層の開拓に成功したことを意味し、スレイヤーズという作品そのものだけではなくライトノベル小説が大衆小説として市民権を得ることに成功した先駆け的作品ということになります。さらに後に出版されるライトノベル小説やメディアミックス戦略に多大な影響を与えたという点でもスレイヤーズは「ロードス島戦記」とならびライトノベル史にその名は燦然と輝いています。
さてスレイヤーズの内容はというと、主人公の魔法使いリナの一人称視点で描かれるファーンタジー小説で、リナの横暴ぶりやリナの保護者ガウリィのボケ具合が軽妙で我々読者を楽しませてくれます。反面全体を通してシリアスなシーンも多く併せ持ちます。このシリアスと笑いのバランスが実に巧妙に仕組まれており、その世界観に圧倒されながらも気楽にエンジョイしながら読み進められるのは本作の魅力の1つではないでしょうか。また敵役も個性豊かな存在として数多く登場し、各キャラクターに多くのファンがついている作品としても有名です。
また本作の1つの特徴として独特な擬音表現が施されています。この擬音表現には批判の声もありますが、新しい1つの形でより情景を想像しやすい表現であると私は思います。例えば浅田哲也が麻雀放浪記で麻雀パイをあらわしたように、斬新な表現というものは称賛と同時に批判も受けやすいものなのかもしれません。まだスレイヤーズを読んだことのない人は、この表現を楽しむのも一興です。