愛と哀に満ち溢れたセンス・オブ・ジェンダー賞話題賞受賞のSF小説
「スワロウテイル人工少女販売処」は、 人工妖精の揚羽(アゲハ)が主人公の物語です。「人工妖精」とは、性行為によって感染する病気により、男女バラバラに隔離された者たちのパートナーとして創られたフィギアです。
人工物ですが、人間と同様に心を持ち人を愛することができます。主人公の揚羽は、ほかの人工妖精たちとは違う能力を持ち、そのために、ある使命を背負っていきます。
見どころは「悲しみ」です。人間に愛されようとする人工妖精たちの「悲しみ」、そしてその人工妖精を愛そうとする人間たちの「悲しみ」が、物語全編にわたって、溢れています。伏線をはりめぐらせたミステリー仕立ての構成に、個性的で魅力的なキャラクターが活躍する満足度の高い作品です。
アクションシーンの迫力と緊張感、そして揚羽の舞いのような美しさは、一気に読んでしまうような力を持っています。人間ではない者の苦悩を描くにおいて、冷静さを保ちつつ悲哀を表現しているところが、本作品の素晴らしいところです。世界観が独特で、専門用語がたくさん出てくるので、序盤はなかなか読みにくいかも知れません。ですが、読み進めているうちに、グイグイと引き込まれてしまいます。特に、中盤辺りから物語の展開は一気にスピードを増します。
終わり方も、衝撃的かつ感動的です。読者が想像できないような展開に心が動かされるような作品です。