2013年電撃小説大賞受賞作
「ゼロから始める魔法の書」はファンタジー作品では王道ともいえる「異世界」・「剣と魔法」・「バトル」がちりばめられた作品です。主人公は「魔女」と「獣人の傭兵」という設定。流れるようなストーリー展開で気が付けば物語の最後まで一気に読み進んでしまっている類の作品です。
本作の特徴として、伏線回収が絶妙である点があげられます。他作品でみられるような頭をかしげたくなる設定の食い違いなどがなく、知らず知らずのうちに綿密に計算された道を歩かされていことに驚きを覚えます。昨今よく見かけるような伏線だけをちりばめて回収できないような作品とは一線を画します。
またその表現能力も秀逸です。頭の中にどんどんと、その情景が流れ込んでくる文章には、これがデビュー作なのかと圧巻させられます。2013年度の電撃小説大賞作品だけはあります。
王道だからこそ読者を引き込むのが難しいこともあるはずなのですが、それら難題をすべてをクリアし読者をぐいぐいと引き込んでいきます。ファンタジー作品を変えた「ゼロから始める魔法の書」は、やはり2013年電撃小説大賞受賞作品にふさわしい作品です。あえて難点を上げるとすればもう少し迫力のあるバトルがあっても良かったかもしれません。ですが良作であることは間違いありませんので是非、一度王道魔法ファンタジーの世界を味わってください。