小池一夫先生 書評
2500年前に書かれたギリシャ悲劇を、現代の電子書籍で読むとき、「技術の発達ほど、人間の精神は発達しない」ということを実感する。
最新の機械で読む紀元前に描かれた悲劇は、同じ貌をして、毎日のようにニュースで流れている。親殺し、近親相姦、自分探し、子捨てと言う風に。
そして、この「オイディプス王」は、「物語」の原型である。
見事な「起承転結」の型があり、自分で自分を追い込んでいくミステリーでもある。
「父を殺し、母と交わる」という予言から逃れるために、あがけばあがくほど自分を追い込んでしまう。
この物語を読むことで、人は多くを学び、そして、何も学ぶことが出来なかったともいえる。
なぜなら、私たちは、オイディプス王と同じ苦悩を2500年間抱え続けているのだから。