同じ大きさだった場合、どの生物が一番強いのか
テラフォーマーズは、貴家悠(原作)/橘賢一(作画)の二人の手により2012年より、週刊ヤングジャンプ(初出は2011年のミラクルジャンプ)にて連載されている作品です。本作は、2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編1位を獲得した人気漫画でTVアニメ化もされています。
未来の地球、人口が増えすぎてしまった世界。政府は火星を人が住める星にする「テラフォーミング」を計画し、火星に特殊なコケと「ゴキブリ」を送り込みました。数年後、調査に向かった若者たちが見たものは今まで見たことも無い黒い人型へと成長した「ゴキブリ」だった・・・これが本作の舞台設定です。
人間がゴキブリに対して感じる言いようも無い嫌悪感、恐怖感・・・。これらゴキブリに対する負の感情は太古の昔、人間の祖先がまだ小さな獣だったころから植えつけられた防衛反応だとも言われています。我々の先祖である哺乳類は巨大なゴキブリの餌とされていたともいわれており、ゴキブリに対する負の感情はその時代から人間に刷り込まれているという説もあります。
そんな昔のように、自分より大きなゴキブリが我々を襲ってきたとしたら・・・・どのようにゴキブリに対すべきか・・・それが本作の大筋です。面白いのは駆除すべきゴキブリが、人間に対して向ける嫌悪感はまさに我々がゴキブリに対して向けるそれなのです。
本作はJJエイブラムスの作品が如く、序盤から大盛り上がりです。ヒロインと思われていた女性がすぐに死亡。顔を覚えるどころか、名前が出る前に次々と死んでいくメンバーたち。
そして、彼らが火星に来るにあたって与えられていた「虫の力」。その力を使って、ゴキブリと死闘を繰り広げていきます。一巻で第一部が終わり、主人公ともう一人の青年以外はほぼ死亡、小型のポッドで地球に帰還するところで一旦幕が下ります。しかし、二巻以降はメンバーも大幅に増えてますます熱いバトルが繰り広げられていきます。
ゴキブリは苦手・・・という方が多いかもしれませんが、それを差し引いても面白さはバツグン!能力バトルが好きな人にはぜひともお勧めしたい作品です。
見どころの1つとしてあげられるのは、もし大きさが同じだった場合、どの昆虫・生物が一番強いのかといった知的好奇心をくすぐられる設定です。スズメバチの遺伝子を組み込まれた主人公的な立ち位置にいる小町小吉、そのほかにもアシダカグモやシャコ、デンキウナギなどの能力をもった隊員たちがゴキブリと戦うさまは興味深いです。
作品は2014年10月現在も継続していますが、是非見ていただきたいのは本作の1巻です。通常、漫画作品は2~3巻あたりから新しい流れ・展開が生まれ、その作品の人気に火がつくか否かが決まりますが、本作テラフォーマーズは1巻だけでおなか一杯になるほど完成度が高く、1つの映画を観終わったような読後感が味わえます。まだ読んだことが無く、読もうかどうか迷っている方がいるのならば、是非お試し的な意味でもテラフォーマーズの第一巻を手に取っていただきたいと思います。