「医者って一体、なんなんだ?」究極医療ヒューマンドラマ
永禄大学付属病院で働く研修医、斉藤英二郎。同大学の医学部を卒業し、附属病院での勤務が始まって3カ月が経過していた。研修医とは、医者の見習いとして大学の勉強では体験する事ができない、治療や手術といった医療行為の実技を学び、実際に医者としての実力をつけるための修行期間である。
平均労働時間は16時間という激務にも関わらず、貰える月給は3万8千円という高校生の小遣い稼ぎのアルバイト料とさしてかわらない超低給待遇。その給料で、寮が提供される訳でも食堂がただで利用できる訳でもない。
生活費を稼ぐため、とある病院での夜間の当直のアルバイトをする事になった英二郎。初めての夜間当直の仕事で、深夜に運び込まれる救急医療の現場に圧倒される。目が回るような忙しさであったが、無事当直の仕事を終え、救急車の受け入れを拒否せずに懸命に治療を行う病院に感動する。しかし、その裏には人を救いたいと言う純粋な医療行為とは別の病院の裏事情あったのだ…。
医療と言う現場にある様々なしがらみや、システム、患者に対する真摯な医療行為の裏に見え隠れする金銭事情など、理想と現実の狭間で苦悩する研修医を描く。「海猿」の佐藤秀峰が描く医療ヒューマンドラマ。
みんなの感想
◆人命救助というサービス
医療行為を行っている医者は、決してボランティアで人助けをしている訳ではない。純粋に人を助けたいと言う気持ちを持っているかもしれないが、医療行為という有料サービスを提供しているのである。普通の会社と同じように縦社会でのしがらみや利権、部署同士の微妙な関係性、金銭に関わる様々な事情など、後ろ暗い現実の数々が生々しい。普通の会社と違うのは、そこで取引されているのが人命に関わることだと思うと、ゾッとしました。
◆求められるのは技術や知識だけではない
英二郎が青臭く、人情的で患者一人に対する思い入れが強いというのもあるかもしれませんが、登場する様々なタイプの医者の先生方と患者との接点が非常に希薄に感じました。毎日何十人、何百人という患者を見ている中で、きっと麻痺してしまうのかもしれません。英二郎が持っている、医療行為に対する使命感や、目の前の患者に親身になって救いたいと思う純粋さ、その心に容赦なく叩きつけられる医療現場の現実。医者という職業の技術や知識だけでは渡っていけない世界。医者を続けていくことの難しさを見た気がします。
【関連記事】
インタビュー:佐藤秀峰先生が描く「マンガの未来」とは