審査員の満足感を共感せよ
ミスター味っ子は父親のいない少年味吉陽一が、母親と一緒に残された日之出食堂を切り盛りし、美味しい料理を求めライバルと切磋琢磨していく姿を描いた作品です。主人公の味吉陽一は、創意工夫をして料理を作ることの天才で食堂を盛り立てていきます。同作は1986年から1989年まで週刊少年マガジンで連載されていました。TVアニメ化もされています。
グルメ漫画というのは、やはり、出てくる食べ物がおいしそうに描かれていることが重要だと思いますが、この漫画に出てくる料理はグルメ漫画の中でも一、二を争うほどおいしそうに見えます。少年がいる食堂は普通の人が気兼ねなく入れるような大衆食堂なので、材料費がかかっていそうな凄い料理は出てこないのですが、料理のつや湯気の描き方がうまくて温かい料理が本当に温かそうに見えるのです。
ストーリーは、ただ食堂を切り盛りしていく話だけではなく、他の天才料理人とのバトルも織り込まれます。この漫画の見どころは、バトルにおいて主人公の味吉陽一がライバルを破るために考えるアイデアでしょう。バトル前にこうすればもっと料理が美味しくなるというアイデアが浮かんだところまで見せて、バトルになると、そのアイデアを上回るものをライバルに出されて、大ピンチと思ったところで主人公がさらなるアイデアを繰り出すところがいいです。
そしてミスター味っこの見どころとして絶対はずせないシーンとして料理を味わった審査員のリアクションです。このリアクションのインパクトは大きく、例えば現在少年ジャンプ連載中の食檄のソーマなど多くの作品へ多大な影響を与えました。料理の美味しさを伝える表現はこの作品登場以後一変したと言っても過言ではありません。ちなみにミスター味っ子は続編のミスター味っ子Ⅱが刊行されており、この続編では本作の主人公の子供が主役となっています。