和田秀樹先生 書評
日本という国は、統計より事件で法律や政策が変わる珍しい国である。
アメリカであれ、フィンランドであれ、高校生が学校内で銃の乱射事件を起こしても教育政策を変えることはない。
彼らが政策の成否を決めるのは、あくまでも学力テストの点が上がったか、子供たちの犯罪率が下がったかである。
大事件が起こると統計数字と関係なしに、法改正がなされたり、審議会(ここでも統計が無視される)が開かれたりする日本とは大違いだ。
そんなアメリカでも統計が誤読されたことがあった。
破れ窓理論で犯罪が減ったという嘘がそれだ。
今起こっている社会や経済の現実を統計を介してどう読み解けばいいかを若手の経済学者が解説する本書は、話のタネになる以上に、日本人の思考回路を叩き直してくれる名著だ。