ドラマ化された「半沢直樹」の原作小説「オレたちバブル入行組」、「オレたち花のバブル組」に次ぐ半沢シリーズ第3弾が「ロスジェネの逆襲」です。ロスジェネとはロスト・ジェネレーションの略でバブル崩壊後の就職氷河期に新規卒業者になった世代のことです。別名さまよえる世代とも呼ばれる彼らは就職難や格差社会の困難にもまれてきた時代の体現者ともいえます。
「ロスジェネの逆襲」では前シリーズで銀行から証券子会社に飛ばされた半沢直樹が上司や社会の圧力や横槍に知恵と勇気で立ち向かっていきます。ロスジェネ世代の代表者半沢の生き方はこの理不尽な時代を生き抜く同世代の人間に生き方のヒントや人としての在り方、そして志を教えてくれます。
元銀行員の作者が描く詳細かつリアルな銀行内の人間関係や企業内部の描写はこの「ロスジェネの逆襲」でも健在。リアリティある描写と一サラリーマンでありながら理想のヒーローのように行動する半沢の言動が不思議な爽快感と共感を生み出しています。どこまでもまっすぐに自分の思う道へ進む半沢の行動は痛快です。「ロスジェネの逆襲」はドラマ「半沢直樹」最終回後の話となるのでドラマ最終回のオチに消化不良のある人、続きが気になるという人にもおすすめできます。半沢の理想が結実した傑作です。