第二次大戦中および戦後間もない時期に描かれたSF大作
ロストワールドは、1948年に発売された手塚治虫のSF大作です。続く1949年に発表された『メトロポリス』、1951年に発売された『来るべき世界』と合わせて、手塚治虫の初期SF三部作と呼ばれています。
本作は、手塚治虫がアマチュア時代から描き続けていたもので、商品化される前の作品が手塚治虫の友人たちの間で読まれていたのは有名な話です。
ストーリーは、太古の昔に地球より分離す宇宙の彼方へ飛び去ったとされる『遊星ママンゴ』が500万年ぶりに地球に接近するところから始まります。地球と同じ大気の組成成分を持つママンゴに絡む利権を巡って、少年科学者と彼を助ける大人やロボット、敵対する秘密結社の工作員、自身の特ダネのことしか考えない新聞記者達の間に知恵と力をふり絞った戦いが繰り広げられます。
遊星ママンゴの秘密が暴かれ、秘密結社の存在があきらかになる『地球編』と無限とも言える『遊星ママンゴ』のエネルギーを利用したロケットに乗り、ママンゴそのものの調査に向かう『宇宙編』とに分かれており、両編とも少年科学者である敷島博士が活躍するお話となっています。秘密結社あり、ロボットあり、恐竜あり、宇宙空間ありとSF作品の魅力を余すこと無く詰め込まれたロストワールドという傑作が、手塚治虫がデビュー前にすでに完成させていたことに驚きを隠せません。