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不機嫌な果実【電子書籍】

不機嫌な果実【電子書籍】

著者 ページ数 クチコミ評判
林真理子 352ページ ★★★★☆

不倫小説の最高傑作

 本作品は1995年にテレビドラマ化された当時話題となった小説である。2016年に再度テレビドラマ化されている。
 主人公は水越麻也子。32歳の既婚者で子供はいない。正確には二世帯住宅での同居を目論む姑と一緒に暮らさなくてはならないという理由でと子づくりを延期している状況。姑は良家の主婦らしく品よく優しいが、ところどころ長男の嫁である主人公に嫌味を言ってくるため煩わしい存在であった。夫は主人公の2歳年上の34歳。姑に頭が上がらず、やたら実家を大切にすることから主人公とのすれ違いが多くなっていた。
 主人公には月に一度、夫に内緒で食事を共にする仲の男友達がいる。かつて主人公にプロポーズしたことがある人物である。36歳の弁護士であり名門大学出身のエリートであるが、一般的にいう醜男であるため主人公は恋愛対象から外していた。しかしある日、いつものように食事をしていると、その男性が22歳の若い女性との結婚が決まったことを報復のように告げられる。嫉妬ではなく、夫以外の男性とのもう一つの人生という可能性が消滅した悲しみと怒りで傷ついた主人公。「私って本当はついてない人間なんじゃないだろうか」。「夫以外の人から渇仰され、求められたという事実だけであとの残りの日々を機嫌良く暮らせるような気がする」。そんな思いを抱えて、かつて付き合っていた男性に6年ぶりに連絡をとるのだが・・・。

みんなの感想

◆不倫による地獄のような日々

 女性サイドからの不倫を描いた作品です。結婚生活が落ち着いてくると、ときには現在の状況を不満に思うことはあると思います。そういう意味では、誰もが犯罪と同じように一歩間違えればという危険はあると思いました。主人公は満たされない状況から、また違う満たされない状況へ。飢えてばかりで、いま目の前にある幸せに気づくことができないから不幸だと思い込んでいく。求めるばかりで満たされることがない、地獄のような繰り返しが怖かったです。

◆自己中心な人の不倫の結末

 主人公の心理状態が細かく描写されています。でもあまり共感出来るところがありませんでした。どうしたらここまで自己中心的な偏ったものの考えをする人物になるんだろう、と単純に思いました。でもよくよくみると主人公は恋愛関係に限らず表面的で損得勘定ありきの関係性しかないことがわかります。誰か1人くらいちゃんと叱ってくれるような、まともに相談できる人がいれば不倫にはならなかったのかもしれないなと思いました。



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