ホセ・ムヒカ氏 初来日講演全文掲載
南米の国、ウルグアイで2010年から2015年にかけ足掛け5年、第40代目の大統領を務めたホセ・ムヒカ氏。彼が一躍有名となったのは、政府要人とは思えない、とても質素な暮らしを送った事にある。
持っている個人資産はフォルクスワーゲンのビートル1台とトラクター、農地と小さな自宅のみ。給与の大半を寄付金に変え、残った1千ドルが月給という生活。大統領の公邸を使わずに、公務の際は郊外の自宅から自分で運転をし、通勤する。そんな彼をみて人々は敬愛を込めて「世界で最も貧しい大統領」と呼んだ。
貧困の幼少を送ったムヒカ氏は、社会主義革命を目指すゲリラ組織トゥパマロスに参加。1960年代、長期経済危機にあったウルグアイでは「義賊」として大衆に支持される。しかし、1970年代には軍事政権が台頭し、トゥパマロスは壊滅。その後、再び民政化が進み、ゲリラ活動を行わない左派政党として復活。1995年の下院議員初当選から、2005年の農牧水産相を経て、2010年に大統領へ就任。
人工妊娠中絶の合法化や、同性結婚を認める法令、大麻、マリファナの使用を限定的に認めるなど、大胆な政策で注目を集めた。
2016年、初来日を果たしたムヒカ氏が、若者に向けてのエールを送りたいと、東京外語大学で行った講演をまとめた一冊です。
みんなの感想
◆思わずドキっとした貧乏の意味
「貧乏な人とは、欲に際限がなく求め続ける人のこと」という言葉にドキッとしました。お金があるとついついあれもこれも欲しくて浪費してしまう癖があり、結果として貧乏となっている自分。気が付けば、周りにあるものがどれだけ本当に必要なものなのかと思うと、この言葉の重みを痛感せざるを得ません。金銭的な豊かさを追求するが故に持ってしまう貧しさと、質素であるが故に縛られない自由と豊かさというものの大切さを知り、とても勉強になった本です。
◆理想的なリーダー像
大統領という地位にありながら、あくまで庶民の代表としての目線に拘り続ける姿勢が素晴らしい。本編で紹介されるエピソードの見るに、質素であることを尊び、経済至上主義に批判的な立場を取っている上で、これほど説得力のある為政者がいるだろうか。自ら実践しているが故に語られる言葉は一つ一つに重みを感じさせられる。それでいて、決して押しつけがましくなく、謙虚さ持って、学生たちにやさしく語りかけている印象があり、国民から指示が厚いことにも納得ができる。