直木賞作家佐々木譲の作品。このミステリーがすごい!2014年14位
社会派エンターテイメントで有名な佐々木譲の作品です。最近では『廃墟に乞う』で直木賞を受賞されたのでご存じの方も多いと思います。
作品は川崎で殺された女性の死体から18年前に代官山で起きた殺人事件に関係するDNAが検出されるところから始まります。そのDNAは犯行当時の関係者のものでしたが事件には関係ないとされていた人物のものでした。18年前の事件は被疑者死亡という形ですでに決着をみていましたが、もし川崎の事件と18年前の事件の犯人が同一犯であった場合、警視庁は冤罪を犯してしまうことになります。事件が発生した神奈川県警よりも先に犯人を確保せよという命令を受けて刑事たちが動きます。
代官山コールドケースの面白さは、淡々と捜査が進むところです。もちろん登場人物は魅力的で個性もあるのですが、そんなことにはお構いなくじわじわと犯人を追い詰めていきます。佐々木さんの知識は素晴らしく警察における捜査方針や取り調べ方法などリアルの一言に尽きます。余分な心理描写や人物描写を極力削ることで話はスピーディーに展開し、まるで海外の1時間ドラマを見ているような錯覚すら覚えます。
そして主人公は警察そのものだと言わんばかりに理詰めで犯人を追い詰めていく刑事たちは、ドラマで見るようなおちゃらけた刑事は誰一人存在しません。そういった硬派な一面も本作の見どころになっているのではないでしょうか。