家族愛を考えさせられる、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品
「代理処罰」は嶋中潤の作品で、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作で、何度もこれまで最終候補に残りながらも苦節14年を経ての渾身のミステリー作品です。
この作品の見どころは、高校生の娘が誘拐されて、サラリーマンの岡田に2千万円の身代金を要求されてます。更に受け渡しの条件に母親を指名されますが、妻は事故で女性をひき殺してしまい故郷であるブラジルに逃亡して行方知れずとなっていました。ブラジルに渡って、家族を捨てた妻を連れて帰らないと娘は救えません。絶体絶命の父親と、母親の謎めいた失踪、そして誘拐犯の真の目的と気になるところばかりです。
最初のプロローグは、何が起こったのかさえわからない謎だらけのプロローグからはじまって、平凡な生活からはかけ離れた想定外の展開に読者はスリリング感と謎だらけの話に引きこまれていきます。
スピード感あふれる展開になっているので、映画のワンシーンのようにも感じることが出来ます。文章自体は、簡潔ですがそこが逆に、この話の世界観をより深く味わうことが出来ます。めぐるましく変わっていく展開と、最後に解き明かされる謎に、はらはらしながら読ませてくれる作品です。ミステリー作品が好きな方には、一度は手にとってもらいたい小説です。