柴田亜美ワールドの原点
柴田亜美のセンスはドラクエ四コマ劇場の時代から輝くものがありました。そして周囲の期待と注目を集める中、1991年『月刊少年ガンガン』の創刊号と共に連載が開始されたのが「南国少年パプワくん」です。1992年にテレビ朝日系列でテレビアニメも放送されました。
当初は不条理ギャグであったり、登場キャラも非常に個性的でした。初期の見どころは「ナマモノ」と呼ばれるパプワ島の住民たちです。カタツムリであったり網タイツを履いた足の生えた鯛であったり、それでいて人間の言葉をしゃべるという、彼らのシュールな容姿や行動は印象的です。そして男同士の同性愛をモチーフにしたギャグが数多く登場しますが、下ネタ化させずに表現する手腕はさすがです。
ストーリーはかなり複雑です。シンタローは世界最強の殺し屋集団「ガンマ団」の総帥の息子です。愛する弟が幸せに暮らせるようにと願い、ガンマ団の秘宝を奪って逃走します。追手からの追撃によって、南国の島「パプワ島」に漂着します。島に住む唯一の人間、パプワくんがシンタローの秘宝を奪ったのがきっかけで、シンタローは秘宝を奪い返すという名目のもとパプワくんと一緒に暮らすことになったのです。
しかし、シンタローが持ちだした秘宝はシンタローやパプワくんの出生にも関わる重要な石でした。シンタローの正体もストーリーが進むにつれ変わり続け、シンタローとは一体何者なのかということを読み直さなければわからないほど複雑化します。
物語の伏線こそ残るものの柴田亜美ワールドの根底となる部分を描いている為、この作品無しでは柴田亜美の漫画を語ることはできないのです。