ホラー漫画界のカリスマ日野日出志の傑作作品
ホラー漫画界のカリスマであり、映画監督でもある日野日出志が1976年に漫画雑誌の連載で発表した作品「地獄小僧」。数ある名作の中でも傑作との呼び声が高い本作は、ホラー漫画ファンでなくとも著者の才能と魅力を感じ取ることができる一冊。
細胞遺伝学の権威である天才博士・円間羅雪(えんまらせつ)は、美しい妻と頭の良い好青年の息子・大雄(だいお)を持ち、プライベートでも充実した日々を送っていた。ところが、交通事故により大雄が死亡するという不幸が一家を襲う。
謎の老婆からの儀式を受け世に甦った息子であったが、以前の姿とは似ても似つかない恐ろしい怪物と化していた。怪物に姿を変え、人々を襲うという暴挙を繰り返す大雄。彼はその先、いったいどうなってしまうのか…?!
何としてでも息子を救いたいと願い死力を尽くす円間教授だったが、その策略は失敗に終わる。そして明らかになっていく謎とは―
<地獄小僧 みんなの感想>
◆懐かしいが今だからこそ見直されるべき日野ワールド
これは「ワー!キャー!!」と、ただただ騒々しいだけのホラー漫画ではない。映画監督としては海外でも人気の高い日野氏だが、視覚的な恐ろしさ、グロテスクさもさることながら、ゾクゾクくる心理的な作用に襲われる作品の本質は極めて日本的だ。クールジャパンを代表するカルチャーにふさわしいが、この残虐性ゆえに難しいのだろう。
誰にでも勧められる作品でないのがとても残念。見る人が見れば大満足の傑作!
◆ホラーが苦手でも無視できない作品
ホラー漫画はあまり好きではないのですが、日野作品はいつも、怖いもの見たさで覗き見してしまう感覚で読みます。想像を絶する気味悪さにゾッとしながらも、読了後には見てしまった後悔は残りません。日野さん本人もホラーは苦手と語っていたことを知ってからは、なぜ苦手なものにここまで取り組むのかという答え探しのために読んでいることもあり、メッセージ性に引き付けられます。
“地獄小僧”の存在は現実離れしていますが、我々人間と異質化できない気付きがあります。ホラー作品は苦手な人も多いと思いますが、食わず嫌いでいてはもったいない作品です。