» page top
地球を呑む

手塚治虫の地球を呑む(電子コミック)

地球を呑む   【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
手塚治虫 258ページ ★★★

手塚治虫の隠れた名作

『地球を呑む』は手塚治虫の異色作で、1968年から1969年にかけてビッグコミックで連載された作品です。時代は昭和40年代、主人公は関五本松(せきのごほんまつ)という、金も女も興味なし、酒が飲めれば良いという酒豪の男です。彼は父の友人から、ホテルに泊まっているゼフィルスという名の女の正体を探るように依頼されます。ゼフィルスは死んだ母の復讐を実行中でした。

その復讐とは「金を滅ぼすこと(貨幣経済の崩壊)、世界中の法律や道徳を狂わせること、男を嬲って見下すこと」ゼフィルスは一人を指すのではなく、7人の姉妹が同じ女に変装している姿なのでした。その1人ホテルに泊まっていたミルダを探るうちに五本松はゼフィルス姉妹の全世界を滅ぼす壮大な陰謀に巻き込まれていきます。今から40年も前に書かれた作品でありながら、現代社会にも通じるテーマなのは、手塚治虫の作品のテーマが人間の本質を問うものだからなのでしょう。作品中に出てくる土人の長老の言葉は現代人に対してのメッセージです。

「金を世界中にばらまき金の価値をなくす」というのは、今の世界の仮想マネーの膨大さを考えると、ゼフィルス姉妹がいなくても、世界は破滅に向かっているのではないかという気にさえなってきます。誰一人血のつながりのない本当の家族の話は、核家族化が進み、家族のつながりが希薄な今の家族について考えさせられます。



書評を投稿する

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。