魅力的な人物が織りなす日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品
第14回日本ミステリー文学大賞新人賞をとった、痛快ながらもスリリグなコンゲーム小説の傑作として評判が高いのが望月諒子の「大絵画展」です。
ロンドンのオークションでゴッホ作の「医師ガシェの肖像」を一人の日本人が競り落とします。落札価格は、約百八十億円というとんでもない金額でした。その後、時は流れていき日本のバブルがはじけて、借金で追い詰められた男女に対してある依頼が持ちかけられます。それは、倉庫に眠っていた「ガシェの肖像」を盗んでほしいという依頼でした。
依頼された資産家で駄目な男と、借金に追われているホステス、そして売れない若手画家や、画廊やなどそれぞれが個性溢れる登場人物で繰り広げられる話になっています。
落札されたゴッホの「医師ガシェ」の肖像画は、バブルがはじけたあとに何者かに盗まれてしまいますが、何の関係もないはずの人物がラストで、一つの線となって繋がっていくところが大変見どころになっています。本当の黒幕は誰か、盗みを成功させるための計画、騙し合いなど読者の考えていることを、良い意味でくつがえしてくれます。また、謎解き以外にも心情なども大変きちんと描かれているので、話の中に入り込んでいける力作です。