映画にもなった衝撃作
32歳の高校教師、蓮実聖司。さわやかで端麗な容姿を持ち、生徒の心をつかむ話術にも長けている彼は、生徒やPTAから絶大なる信頼と支持を得ていた。しかし、その裏の顔は良心など全く持たないサイコキラーだった。
貴志祐介作「悪の教典」は、学園を舞台としたサイコ・ホラー小説です。第1回山田風太郎賞受賞、第144回直木三十五賞候補、第32回吉川英治文学新人賞候補、2011年本屋大賞ノミネート作と文藝界からも評価の高い作品です。
ボリュームたっぷりの大長編ですが、一見善人そのものの蓮実聖司の内面が少しずつあかされる前半部分から、クラスの生徒全員を巻き込む大惨事になるクライマックスまで一気に読ませる構成となっています。蓮実聖司は邪魔になる人物は容赦なく殺してしまう殺人鬼の内面を持っていて、人を傷つけたり心をもてあそぶことに快感を見いだしてるふしすらあります。その実情を細かく描くことによって、読者が「この人、ちょっとおかしい、いや、凄くおかしい。」と分からせていく前半部分がスリリングです。
誰にも正体を悟られずに犯罪を成功させ続ける蓮見ですが、とある事から歯車が狂い、彼の悪意は担任クラスの生徒全員に向かうこととなります。そこから起こる、生徒全員を巻きこんだ大惨事が見どころになっています。前半部分で生徒一人一人のキャラが細かく描写されているため、生徒に共感しながら読む事もできます。
サイコパス教師に生徒たちはどのような目にあわされてしまうのか、またどう立ちむかっていくのか。クライマックスのスピーディーさは映画を見ているような臨場感にあふれています。