マンガの神様が描く新選組
漫画の神様『手塚治虫』は、多くの名作をこの世に生み出しましたが、今回は少しマニアックな手塚作品を紹介します。今回紹介する手塚治虫の『新選組』は、1963年(発売日1962年?)に少年ブックにて連載された時代漫画で、物語序盤に主人公の深草丘十郎の父が逃亡している男をかくまった為、土佐なまりの男に手打ちにされます。
主人公の深草丘十郎は父の仇を討つために新選組に加入し、そこで親友になる鎌切大作に出会います。基本軸はこの二人を中心に進みます。どちらかといえばこの『新選組』は、子供向きの作品で中心人物の二人は手塚治虫オリジナルのキャラクターです。新選組愛があふれた作品かといえば、どちらかといえば新選組を貶めている感が強いかもしれません。多くの作品でもそうですが、局長の芹沢鴨は大酒飲みの粗暴な問題児として扱われ、あまり好意的には描かれてはいません。平山もとても神道無念流の使い手は思えぬ弱さ。
結論としていえば新選組という題名である必要はなかったと思う作品です。ある程度好意的に描かれているのは近藤勇と沖田総司くらいでしょうか。しかしながら、近藤勇に関しては主人公は尊敬しているようですが、もう一人の重要な登場人物である鎌切大作は、強いだけで他はダメといった評価を下しています。まぁ鎌切大作の立場を考えればそういった評価も当然と言えば当然かもしれませんね。また新選組といえば、外せない一人に土方歳三がいます。ですが本作の土方は単なるサディスティックな人間としてしか描かれていません。主人公に軽蔑される役回りです。まぁいくらかイケメンには描かれているかもしれませんが・・・。
作品の鍵を握る人物として坂本竜馬が登場します。新選組というタイトルながら新選組を持ち上げる作品ではなく、坂本竜馬を持ち上げる作品となっています。近藤勇をして「坂本先生は偉い人だ」といったようなことを作中で述べています。最終的には坂本竜馬の手を借り、主人公は新たなスタートを切るのですが、ちょくちょく主人公に教訓めいたことを述べまた助けてもくれます。物語終盤の親友とのやり取りはなかなか見どころがあるのではないでしょうか。