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日本発狂

手塚治虫の日本発狂(電子コミック)レビュー

日本発狂 【電子コミック】

著者 ページ数 クチコミ評判
手塚治虫 227ページ ★★★★

あちらの世界とコチらの世界を描く

手塚治虫の作品として、マイナーな作品に分類されるであろう本作品『日本発狂』は、それもそのはず連載誌が学研より出版されていた高一コース(現在廃刊)にて1974年~1975年に連載されていた作品です。

まず今日では多くの若者が興味が引きそうなこの興味深いタイトルですが、なかなか日本国民は発狂しません。日本国民が発狂するのは物語の終盤の方です。タイトルから想像するに徐々に日本国民が発狂していきおぞましい世界が展開されるのかと思いきや、発狂して怒り狂うといったほうが正しいでしょう。日本人強いです(笑)。

さて物語の内容は、大きく分類すれば心霊とSFといいったところでしょうか。タイトルほど怖くおぞましいものではなく、設定が秀逸だなと思える作品です。主人公の北村市郎ことイッチは、夜間高校に通う少年である日、深夜に謎の集団に遭遇し心霊現象を体験します。そこから心霊の世界に関わるようになるのですが、この心霊の世界のあり方が非常に興味深い設定で描かれています。この世(我々が暮らす現世)とあの世(死んだ人が行く死後の世界)は、表裏一体で、この世で死ねばあの世に行き、あの世で死ねば現世で生まれるといった世界観が造られています。

そしてあの世にも文明があり、この世より陰鬱な面を抜けばそれほど変わらず、しかもなんと戦争をしているのです。あの世での兵不足もあり、この世で死者をだし兵士として連れてこようとしている死神といわれる存在など現在でもこれら世界観は十分通用するどころか非常に面白いです。

ちなみにこの世からあの世に行くのは大変なようですが、あの世からこの世に行くのは比較的簡単なようで、そういったあの世に暮らす住人がこの世にあらわれると幽霊として認識されます。最終的にあの世から7千800万人の霊が日本に訪れるのですが、顛末がやや急ぎ過ぎの感はありますが、古さを感じさせず、現在見ても面白い良質な作品であることは間違いありません。



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