サスペンス要素が主軸ですが、その裏にある人間の優しさであったり、心の温かさが滲みでてきており、それが余計に切なさに拍車をかけています。
盲目の女性ミチルは一人暮らしをしています。ある日ミチルの家の近くの駅で男がホームから突き落とされ死亡する事件が起き、容疑者であるヒロアキがミチルの家に忍び込み奇妙な同居が始まるというお話です。ミチルは家の中に誰かがいることに気づきますが、自分が襲われるようなことがあれば自殺すればいいと考え、知らんふりをします。
ヒロアキはヒロアキでミチルの家で息を殺しながら暮らしていくのですが、食器棚から土鍋が落ちてミチルにぶつかりそうになるのを助けたり、ミチルがつけっぱなしにしたストーブの強くなりすぎた火を弱めてあげたりなどします。ミチルもそれが分かり2人の間に名づけようのない関係が出来上がります。最終的には事件は解決するのですが、見どころはとしてこれは二の次だと正直私は思っています。ミチルやヒロアキの心境がこの同居生活によってどう変化し、これから人生への新しい一歩を踏み出そうとしていくのかを見守ってやることが読者の役目だと思いました。