名作か迷作、評価が分かれる手塚治虫作品
手塚治虫作品の中でも、知る人ぞ知る、というSF作品です。1978年に『週刊少年マガジン』にて連載された漫画作品です。第一巻は、日本人の二人の青年の青春友情物語から始まります。悪魔と神が友情というものについて賭けをするということで、青年二人は大きな力によって修復不可能なまでに仲を裂かれてしまうのです。しかし、物語は思いもよらぬ方向に転がります。まず、通常ならばなかなか考えられないことですが、主人公が死んでしまい、復活し、それに付随して主人公のビジュアルも名前も変わってしまいます。
その新たな主人公こそが「未来人カオス」なのです。砂漠の惑星で出会った大男との新たな友情と別れ。そして自分がけだものだと思っていた生命体との友情。一巻は、怪しい惑星の遺跡に放り出されるところで終わりますが、その後も「まさかこんな展開になるとは・・・」ということが立て続けに起こり、終盤にさしかかると、有名な宇宙商人となったカオスと顧客とのオムニバス的な物語が入るなど、そもそもどんな話だったのかわからなくなります。
しかし、そこはさすがの手塚治虫、最後の最後は「友情とは何か」「絆とは何か」を考えさせられる終わり方をします。その物語の際限のない広がり、予測を裏切る展開は、冷静に見ると支離滅裂と言っても過言ではないのに、読後感はさわやかで心に残ります。