ライトノベルよりも文芸作品として評価できる電撃小説大賞銀賞作品
『東京ヴァンパイア・ファイナンス』は真藤順丈(著)/佐々木少年 (イラスト)の小説です。作品のジャンルはライトノベルですが、安部公房や三島由紀夫を愛好するという作者なので、うまい言い回しや比喩が多く使われ、一般小説に近い読みごたえのある作品となっています。第15回電撃小説大賞銀賞受賞作品(2008年)。
トレイチ(10日で0.1割)という闇金として高いのか安いのかいまいちわかりませんが、独自の金利で融資を行う「ヴァンパイア・ファイナンス」を利用する人々を描いた作品です。会社代表の万城小夜は黒ずくめの服装で夜中に現れ融資を持ちかけます。破格の条件で貸し付ける条件として、小夜は顧客の生活に首を突っ込んでいくのです。
デートの成功、性転換手術、振り込め詐欺グループへの復讐など、さまざまな動機を持った人たちが登場します。年齢層も、若者からお年寄りまで幅広いです。
数人の物語が並行して進み、徐々に絡み合っていく群像劇で、最後はきれいに話がまとまります。ヴァンパイア・ファイナンスの名前の由来なども最後に明かされます。初読のときは「なるほど」と思わされ、読み返すことでまた楽しみが増える作品です。
欲望や夢などモチベーションとなる感情や、不安や閉塞感といったネガティブな感情などをしっかりと表現している点が見どころです。