中谷氏の金言が光る一冊
「結婚したら幸せになれる」と言う人がいる。本当だろうか? たとえば、就職氷河期の中、何とか第一志望の会社に入社できたとしても、入社したから即、幸せになれるかというとそれはまた別の話。入社した後の働き方如何によって、毎日が充実しているかどうか、自分がやりたいことができるかどうかは変わってくる。それは、結婚も然り。
場合によっては、入社する前、結婚する前の方が楽だったと思えることもあるだろう。そんな中、困難なことが訪れると人は悲観的に考えてしまいがちだ。本書流に言うなら「ピンチだ大変」と思ってしまうのである。
けれど、「楽しい人生より、人生の楽しみ方を見つけよう。」の著者、中谷彰宏氏は「一生懸命頑張った人にしか、ピンチは来ない」と言う。あたかもピンチが滅多にお目にかかれない幸運のように。
先ほど挙げた希望の会社に入ったら、結婚したらそれだけで幸せになれると思っている人が描く「幸せ」というのは言うなれば「手放しの幸福」である。「手放し」であるから、自分ではその幸せの重さを感じることができない。
けれど、ピンチはそうではない。しっかりした重みをもって降りかかってくるのだ。氏はまた「成功しても、「孤独」と「下積み」はなくならない」と言う。「「今自分が孤独なのは、夢を実現していないからだ」という思い込みは、間違っています。成功すればするほど、もっと孤独になります。ますます下積みをしなければならなくなるのです」そう述べた上で「「孤独」と「下積み」を楽しもう」と言う。
童話の「青い鳥」ではないが、漠然とした幸せを追いかけているだけではしんどくなる。童話では、普段気づかないささやかなことの中にこそ幸せがあるというふうな教訓で物語が終わるが、この青い鳥の正体こそ「下積み」なのかもしれない。青い鳥を探している人は、実は自分の部屋にどっしり居座る青い鳥から目を背けているだけなのだ。孤独と下積みは、ふわふわした幸せと違って一生モノなのである。
さらっと読めるが、氏独特のキレッキレの金言が後からじわじわ効いてくる本書。今、「ツラいな」と感じている人、困難を乗り越えようと思っている人には特に一読を勧めたい。
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