小手鞠るいの島清恋愛文学賞受賞作品
『欲しいのは、あなただけ』は小手鞠るいの恋愛小説です。2005年に第12回島清恋愛文学賞を受賞しました。主人公が二人の男性と経験した恋愛を描いた小説です。タイトルのとおり、主人公が他の何物にも目をくれず恋愛に没頭していくさまが描かれています。女性の恋愛心理を的確に描いており、とくに女性の読者におすすめの小説です。
巧みな人物描写とスピーディーな展開に惹きつけられ、一気に読むことができる作品です。見どころは2人の男性の描写です。学生の頃の恋愛相手は「男らしい人」として描かれています。京都弁で強気な発言をし、心身ともに主人公のすべてを貪ります。一方、30を過ぎてから恋をしたのは「優しい人」で、主人公に丁寧に接してくれます。対照的な二人の男性ですが、その背景に男のエゴが滲んでみえる点は共通しています。
それでも主人公は、男たちのそんなエゴも含めて全てを受け入れます。ただひたすらに相手にのめりこむ姿には圧倒されます。相手と自分を同一化してしまいたいと考えるほどに恋にのめりこむ主人公の姿は、ある人には共感を呼び、またある人には反発や嫌悪を起こさせることでしょう。いずれにしてもこの小説は、読者の感情を大きく揺さぶる作品だと言えます。