映画化もされた歴史小説
武士の家計簿に続き映画化された「武士の献立」は、大石直紀の作品です。武士の家計簿が歴史学者である磯田道史氏のノンフィクションのドキュメンタリー的な要素の強い著書を原作としていましたが、こちらは歴史の中にある加賀藩に使えた御料理人を題材として描かれた物語です。
主要登場人物である加賀藩御料理人の舟木伝内とその息子である舟木安信、そして料理の腕を見込まれて嫁となった舟木春は実在した人物であり、舟木伝内と安信の共著である「料理無言抄」や「ちから草」といったレシピ本が現存しています。しかし武士といえども身分は足軽に近いもので、「包丁侍」と揶揄されていました。
しかし大名家の健康を守る大事な役目であることから、身分よりも重責な立場にあることは間違いありません。舟木家は明治の時代となるまで、7代にわたって加賀藩御料理人を勤めました。
この物語は、伝内に頼み込まれて跡継ぎである安信に料理を教え込むために嫁入りした春のスパルタ教育のおかげで、跡取りとしてふさわしく、また更なる出世を果たす事が軸となっています。一方で、独り立ちできる程に腕を上げた安信のもとを「もっとふさわしい嫁を」と身を引く春と、春への想いに気がついて春を探す安信の二人が心を通わせることも見どころとなっています。