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氷菓

米澤穂信(著)上杉久代(イラスト)清水厚 (写真)の氷菓(電子書籍)

氷菓 ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞【電子書籍】

著者 ページ数 クチコミ評判
米澤穂信(著)上杉久代(イラスト)清水厚 (写真) 217ページ ★★★☆

第5回角川学園小説大賞 ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞

この作品を読み始めたときは、省エネ主義の主人公折木奉太郎が古典部に入るきっかけとなった姉の供恵の手紙がちょっと押し付けがましいように思い、ストーリー導入部分でとっつきにくさ感じたのですが、物語が動き出すとすぐに引き込まれてしまいました。

この作品の見どころは、今ここの謎解きをしているように見せて、33年前の事件といつの間にかリンクしていくというストーリーテリングの妙だと思います。でもそれだけでなく、古典部部長である千反田える主体の謎解きと平行して奉太郎のストーリーが同時進行していくところも魅力です。奉太郎の性格や思考回路、言葉などはとても理屈っぽく感じられ、現代の高校生らしくないと感じてしまうとろもありましたが、奉太郎が「灰色」の、人との関係にコミットしていかない性分だからこそ、姉は強引にでも古典部への入部を勧めたのだな、と納得できました。

最後のハイライトは、「氷菓」という言葉の意味だと思います。漢字で書くと硬質な印象にはなりますが、それでも甘く軽やかな存在と、そこに隠された裏の意味とが対照的で、強い印象が残りました。

謎が解けた、という意味では開放感はありましたが、えるの伯父さんの無念さがいつまでも残っているような気がして、すっきりとした読後感というよりは余韻の残る終わり方だと思います。また本作『氷菓』は、2012年にTVアニメ化もされています。



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