山崎豊子が描く社会派大ベストセラー
『沈まぬ太陽 アフリカ篇』は、山崎豊子の『沈まぬ太陽』の第一部。日本航空と、実在する同社社員で同社の労働組合役員である人物の体験に基づいて脚色、再構成されたフィクション社会派作品である。2009年に映画化されたが、2016年にテレビドラマ化される。
報復人事に自分や家族が翻弄されつつも、自分の正義を信じて突き進む男の姿がある。時代は1971年。昭和の日本。主人公である恩地元は大手航空会社「国民航空」のエリート社員。将来を約束された恩地だが労働組合の委員長を押し付けられたことで人生が大きく狂う。
親友ともに社内環境改善を進めるが、会社上層部にとって恩地の行動は目障りでしかない。突然の海外赴任が恩地に言い渡される。しかし、実態は組合委員長である恩地を左遷させ、労働組合を弱体化させ、恩地自身への報復が目的だった。
恩地は生活環境が悪いパキスタンに海外赴任した。海外赴任の任期は長くても2年。しかし、報復人事である恩地の場合、会社は慣例を無視し、さらなる劣悪な環境へ恩地を赴任させる。
中東からアフリカへと事実上の「流刑」を強いられる恩地。穏やかだった顔つきも変わり、広大なアフリカのサバンナで、巨像を相手に猟銃を構えるようになる。赤く燃え上がる雄大な夕陽を見ながら、恩地の壮大なドラマが始まる。
みんなの感想
◆今も日本の各地で起こっていると思うと怖いですね……
報復人事に翻弄される主人公。主人公のサラリーマンは報復人事により日本から遠く離れたアフリカで10年もの時間を過ごします。これは完全なフィクションではなく、現在の気企業の中でもこうしたヒドイ人事が行われていると思うと怖いですね。人生を大きく歪まれた主人公は痛々しいですが、それでも自分を貫く姿勢に勇気をもらいます。
◆組織の歪みを感じる本
組織の不条理・歪み、派閥争い、政治汚職、個人の私利私欲。様々なものが主人公の周りで起こっています。将来を約束されたはずが、労働組合に入ったために人生を会社によって翻弄される。これは完全な作り話ではないでしょう。多くの会社でも現在進行形で起こっている怖い出来事です。大企業だから大丈夫と信じている人も多いですが、偽装問題は当たり前のようにニュースを騒がせています。そういう人間が多すぎるとため息がでますが、本書の主人公のように自分の正義を突き進む人がいるのも事実。本書でも現実でも正義を持つ人がトップに立ってほしい。そう思える作品です。