リアリティあふれたSF小説 星雲賞受賞(短編)作品
SF小説は取材や資料、科学的考証等でどこまで現実にそくした話にできるかでリアリティが決まります。この「沈黙のフライバイ」は、そのリアリティが見どころの一つであるといえます。
もちろんSF小説なので現実は無視しても話を作ることは可能なのですが、本作は過去に実際に行われた宇宙開発事業を扱っているのでそこからどう発展するのかが読者の空想を刺激させます。また女子大生という全くの素人の思い付きの話は、読者にとって自分の空想のみの世界ではなく、現実の身近な世界としてとらえることもでき夢が大きく膨らんだ気がします。
世間では知られていないけれども、科学の世界ではそれが常識であり真実であるという事が存在します。自分の思い込みや今までの経験則を一度まっさらにすることも、人生において大切な事なのかもしれません。
ただこの作品は、宇宙を題材に取材にしている為か、かなり難解な専門用語も使われているので、人によっては少し頭がこんがらがる場面もあるかもしれません。しかし、そういった科学的な専門用語を知るきっかけの一つとしてこの作品で勉強するのもいいかもしれません。短編で読みやすいので子供にもおすすめできるでしょう。アメリカのように大規模な開発は、日本では難しいのが現実です。しかし、日本だからできる宇宙開発もあるはずです。そういった事を教えてくる作品であり、読み続けて欲しいなと思えるような作品です。