どこか心地よい昭和の風情溢れる受賞作品
『深夜食堂』は、『安倍夜郎』のマンガ作品で2006年『ビッグコミックオリジナル増刊』が初出で2007年8月からは『ビッグコミックオリジナル』で連載されています。一般的な評価だけでなく専門家の評価も極めて高く第55回小学館漫画賞一般向け部門や第39回日本漫画家協会賞大賞を受賞しています。また小林薫主演でTBS系列でテレビドラマ化もされていて2014年10月から第三部が放送されています。なお2015年には映画化もされる予定です。
「深夜食堂」は、少し昔懐かしい感じがするご飯物の漫画です。タイトルの深夜食堂の名の通り、深夜から朝までしか営業していない食堂を舞台にした一話完結型です。
メニューは
豚汁定食 六百円
ビール(大) 六百円
酒(二合) 五百円
焼酎(一杯) 四百円
酒類はお一人様三本(三杯)まで
あとは材料さえあれば何でも作ってくれるという食堂です。一話ずつクローズアップされているご飯と人情は、独特なノスタルジーを醸し出します。見どころもやはりご飯です。ただし一般的なグルメ系の漫画とは違い、洗礼された美食や食べ歩き・・・みたいなものは出てきません。あくまでも舞台は食堂の中のみ。
出てくるご飯も、「ウインナー」や「煮物」、「スイカ」、「猫まんま」、はたまた「うなぎのたれ」まで!?大抵はどの家庭でも出来そうな、素朴で普通な料理、食材ばかりです。作画がリアルでキレイ、というわけでもありません。雑、というわけでもないのですが、ちょっと独特な感じがします。
この絵柄には好みが分かれるかもしれません。それでも美味しそうで食べたくなってしまうのは何故なのでしょうか・・・。出てくる登場人物達も、特別いい人でもなく、みんな何かしらある普通、もしくはちょっと外れた人達。そんな人たちの出会いや想いに触れながら、ちょっとしんみりとご飯をつつくストーリーが多いです。今はあまり見かけない、昭和の風景が楽しめます。
特別素敵な物だけがいいものなのではない・・・。そう思わせてくれる漫画だと思います。