カーバトル漫画の最高峰
「湾岸MIDNIGHT(湾岸ミッドナイト)」は、楠みちはるの作品で1990年にビッグコミックスピリッツで連載を開始し1991年に誌面を週刊ヤングマガジンに変えて連載。同作は第23回講談社漫画賞も受賞しアニメ化もされた人気作品で、深夜の首都高速で繰り広げられる超高速バトルとそのスピードに魅せられた主人公朝倉 アキオをはじめ、走り屋達そしてチューナー達の人間群像劇です。
廃車処分として積まれていたフェアレディZは悪魔のZと呼ばれていた曰くつきのモンスターマシン。周囲の反対を押し切り、悪魔のZを再び蘇らせた主人公朝倉アキオは、やがてブラックバードと呼ばれる黒いポルシェターボと激しいレースを繰り広げます。
超高速バトルシーンも、もちろん読み応えがありますが、もうひとつの見どころとして、さまざまなチューナー達の物語が描かれているところです。主人公も含め、比較的若い走り手とは対照的に、チューナーはほぼ中年の男達で、それぞれのショップも町の板金屋から高級外車を扱うプロショップの社長まで様々です。
実社会では成功している男達が、公道300㎞オーバーという法外なスピードで走るチューニングという行為を繰り返していく姿は、ある意味、走り手よりも狂気に満ちており、かっこいい不良の大人として魅力的に描かれています。また、スピード感溢れるレースシーンにとは対照的に、ゆっくりと哀愁のあるセリフが流れていくのも特徴です。登場人物の生きてきた人生を湾岸の首都高速レースに重ねた、重厚な人間ドラマでもあります。