伝説の最終回から30年越しの連載再開!!
『男坂』は、車田正美の作品で、1984年から1985年まで『週刊少年ジャンプ』にて連載されたマンガ作品で単行本全三巻が刊行されました(2014年10月に30年ぶりに続巻刊行)。
「男坂」は、ケンカで世界一になる希望を持った菊川仁義の生きざまを描いた物語です。見どころはこの漫画のテーマである硬派を少年誌ならではの行き過ぎ感で読者を引きこむところです。例えば、主人公菊川仁義は人生の中でケンカに負けたことがないとう自負がありましたが、西日本最大の勢力を誇る武島軍団のドン武島将にケンカで敗れることで、自分の弱さを知り、九十九里の鬼山に住む喧嘩鬼にケンカを教えてもらおうとします。喧嘩鬼は「このガケからとんでみろ、この世で、もし、お前が何かをするために生まれてきた人間ならば死ぬまい・・」と言います。
そして、菊川仁義は「オレにはやりたいことがまだいっぱいのこっているんだ・・、オレは何かをするために生まれた人間だァ」と叫び、崖から飛び降ります。崖にあった木の枝がクッションの代わりになり、重傷を負いながらも、うまく生きのびたことで、喧嘩鬼に108つのケンカの心得を教えてもらいます。
このように普通なら考えられないようなことを「硬派」という言葉で納得させてしまうところに、この漫画の魅力があります。ましてや、ケンカの相手は日本だけでなく世界中というところに、スケールの大きさを感じますが、連載途中で未完になったことが悔やまれます。
しかし、一方で伝説も残しています。後に打ち切られた作品のテンプレートになりそうな最終回の1コマが現在でもネットの掲示板などでは語り継がれています。「オレはようやく のぼりはじめた ばかりだからな このはてしなく遠い 男坂をよ・・・!」
なぜ打ち切られた作品がここまで語り継がれるのか、それは実際には一定数以上の作品に魅力を感じていた人々がいたからなのでしょう。
作者の車田正美も、この作品には並々ならぬ思い入れがあるようで、「この作品を描くために漫画屋になった」と言い切るほどです。しかし読者の支持を得られなかった不人気マンガであり、打ち切られたことを認めつつ、一方ですぐにでも「男坂」の連載を再開したいという意欲・希望を持っていました。それが30年越しの2014年に連載が再開され作者の願望が叶うばかりでなく、同年10月には第4巻が発売されました。未完のまま、坂をのぼりはじめたまま終わるかと思われた「男坂」ですが、是非今度は坂の頂まで目指して欲しいと思います。